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[提 言](1)
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地球温暖化を食い止めるためには、各国が利害で対立したり、個人・企業の工夫や省エネ努力を当てにしている
ような時間的余裕はない。
世界共通の炭素税を課して二酸化炭素ガスの排出を抑えるとともに、その資金を”世界を脱炭素社会
(ここでは、脱化石燃料社会を指す。以下同様)
へ変革する”ための技術開発やインフラ構築のための
費用に直接使うべきである。
たとえば、石油の価格(現状は、排出した二酸化炭素ガスを 除去する費用が含まれていない 不適切な価格)が相応に高く、再生可能な自然エネルギーの価格より高ければ、経済活動を阻害するような規制を しなくても脱炭素化は自然に進む。ただし、脱炭素社会へのエネルギーインフラの切替えは個人や企業ではできない。 各国政府や国際機関が先頭に立って推し進めなければならない。そういう仕組みや動きを早急に立ち上げなければ、 地球温暖化を食い止めることは出来ないと思う。 残された時間は少ない。 [2008年1月初稿、2009年6月部分改訂] |
1. 21世紀後半に予想されるさまざまな影響
2. 本当に恐いのはメタンの崩壊 3.世界共通の炭素税の徴収と税収額 4.炭素税の使い道とその配分 a)脱炭素社会のための新技術開発の促進 (支出額) 200兆円 b)脱炭素社会へのインフラ整備の推進 (支出額) 3000兆円 c)森林の保護(砂漠化の防止) (支出額) 1000兆円 d)被害住民の救済と援助 (支出額) 500兆円 5.脱炭素社会への投資のイメージ 6.グローバル執行機関の設置 a)位置づけと権限 b)交代制と情報交換(裁量権限の排除) c)オンブズマン制度の強化 [反論]排出権取引で排出を大幅に削減できるのか |
政治家は、「2050年までに世界で温暖化ガスの排出半減」とか、悠長なことを言っているが、地球上ではすでに温暖化ガスの影響が
方々で出てきている。科学者が
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告でも指摘しているように、その影響が従来の予想を
はるかに越えるスピードで進んでいる。
今世紀中に予想されるさまざまな影響を次に列挙し、その深刻さを確認しておこう。 [1] 温暖化による海水の膨張、
大陸の氷河や極地の
氷河の融解が続いていることから、
今世紀中に2メートル以上の海面の上昇が予想される。
その結果、南洋の島嶼国だけでなく、先進国なども沿岸の大都市は甚大な影響を受ける。[2] 温暖化により世界的に気流の乱れが大きくなり、ハリケーン、サイクロンや台風が、ますます強大化する可能性がある。 そして、今とは比較にならない激しい 暴風雨によって甚大な被害を受ける。 [3] 世界的な気象のアンバランスは、洪水や干ばつや 熱波 の発生を各地にもたらす。 その結果、食物の収穫減少により世界的な食糧不足が起きる。 [4] 淡水の量が減少する。ペルーのクエルカヤ氷冠の溶解が現在の速度で進行すれば、2100年までには 氷冠は 消失してしまうという。飲料水と水力発電による電力を氷冠に依存している数千人の住民は、生活できなくなり移住を迫られる ことになるだろう。 ヒマラヤ山系の多くの氷河も急速に融解している。ヒマラヤの氷河を水源としている6つの大河の周辺住民約10億人も 深刻な水不足に陥るだろう。 [5] 温暖化によりマラリアなどを媒介にする”蚊”の生息地が北上している。その結果、熱帯地方でしか見られなかった一部の 病気が従来の温帯地域にまで蔓延する恐れがある。 [6] 生物種間の共生関係が成立しなくなる危険性がある。例えば、植物の開花時期が早まり、花粉を媒介する昆虫が活動を始める前に、 花が咲き終わってしまうなどということが起こる。その結果、絶滅する動植物の数が加速する。 更に、動植物の生態系の変化も懸念される。一部の生物種は生息地を 北に移動することで、
より繁殖を拡大するかもしれないが、
移動できない生物は
絶滅の危機
に直面するだろう。たとえば、ホッキョクグマの体重が大幅に減少し続けている。ホッキョクグマは海氷の上で 生活し、エサである魚を捕獲するが、体重の減少は海氷の減少と関係があるようだ。現在も加速度的に減少を続けている海氷が消滅すれば、 ホッキョクグマも絶滅してしまうだろう。 [7] 海は地球上から排出される二酸化炭素(CO2)の約25%を吸収している。大気中の二酸化炭素が増えると、海水に溶け込む 二酸化炭素の量が増えて、海水の酸性度が上昇する。 酸性化が進むと、サンゴの骨格やエビや貝、プランクトンなどの殻の主成分である炭酸カルシウムの生成が妨げられ、殻がもろく なったり、サイズが小さくなったりする。魚介類のエサとなるプランクトンや貝類などの小動物が減ると海の食物連鎖が細り、 漁業に深刻な悪影響が出る。要するに、 魚が獲れなくなる。 |
氷点下40度。湖を覆った氷にナイフを突き刺すと、メタンガスが音をたてて噴き出す。マッチの火を近づけると、2メートル近い炎が
立ち上った。
永久凍土には、死んだ植物が分解される時に作られたメタンが大量に蓄積されている。凍土が解けるとそれが放出される。 大気中のメタン濃度は1998年以降、ほとんど変化が見られなかったが、最近上昇に転じた。昨年1年間だけでメタンが2,700万トン増加していると、 米国海洋大気庁(NOAA)地球システム研究所は発表している。 メタンは二酸化炭素の23倍の温室効果を持つ気体だ。融ける永久凍土は、温暖化の結果であると同時に、それを加速する原因にもなる。 日本の面積の26倍もあるシベリアの 永久凍土 は、地球温暖化では済まされず、まさに地球高温化の"時限爆弾"である。 5千500年前に海底のメタンが大気中に放出され、地球温暖化が進行したことが判っている。この温暖化により、日本では 縄文海進と呼ばれる海水面の上昇があった。海面が今より3~5メートル高かったと言われ、 日本列島の海に面した平野部の深くまで海が入り込んでいた。温暖・湿潤で年平均で1~2℃気温が高かったとされている。 また、約6億3500万年前の「スノーボールアース(全地球凍結)」が終わった誘因は、温室効果ガスであるメタンの大量放出だったという。 その太古の地球には氷床が赤道まで覆い尽くされた状態の氷河時代があった。この赤道の氷床の崩壊で、閉じ込められていたメタンが 解放されて地球の温度を押し上げた。この温度上昇により赤道より高い緯度の氷床が順次溶け始め、メタンが大量に放出されて、 地球の温暖化が加速した。 これらのことは、海洋の堆積物や氷河の氷のサンプルを収集して分析した結果、氷床の融解とメタン層の不安定化を裏付ける さまざまな化学的痕跡が発見され、証明されている。 北極の永久凍土と大陸縁辺部の海底下に存在する豊富なメタン層が放出されれば、現代でも同じような急激な気温上昇が起こる 可能性がある。 そして、その兆候がすでに北極圏で起きている。これが加速されて急激な気温上昇が起これば、人類はじめ、ほとんどの生物は 地球上では生存できなくなるであろう。 |
科学者は、大気中に排出された二酸化炭素は長期間空気中にとどまると言っている。人為的な排出をいますぐ止めても大気中の二酸化炭素は
すぐには減らなく、温暖化は進む。
われわれ人類は、将来の世代と地球の生態系を守るために、
化石燃料への依存を一刻も早く断ち切らなければならない。
低炭素社会
ではなく、脱炭素社会(=脱化石燃料社会)へ
移行せねばならない。そのための財源として炭素含有量に比例した税率を課す「炭素税」が必要である。しかも、世界共通で課し、各国の負担や国際競争力に 不公平が生じないようにする。各国が利害で対立している場合ではない。 そして、その税収は、脱炭素社会への技術開発や途上国も含めた各国の脱炭素社会のインフラ整備のための費用および、自然界の 二酸化炭素ガス吸収源の確保・保全(森林の保護など)のための費用に直接当てるべきである。 また、工業国における産業部門からの排出を画期的に抑えるための脱炭素技術の開発(たとえば、石炭を水素で代替する製鉄技術など) に回すべきである。 温暖化ガス削減幅が、2割3割であれば、個人や個別企業の工夫や努力で達成できるかも知れないが、先進国は8割削減が必要なのであれば、 社会や経済の仕組みを 脱炭素社会へ革命的に変えなければ 達成は不可能である。社会・経済システムを変えるには、政府が推進しなければならない。 しかも、現在のグローバル化された世の中では国際的な枠組みとそれに沿った取り組みが必要である。利害が対立する各国それぞれの 取り組みでは早急な実現は難しい。 また、段階的な削減では時間がかかる(間に合わない)し、費用的にはかえってムダが多い。脱炭素社会を目指して今から インフラ整備に取り掛かるべきである。技術的にはかなり実現可能な段階まで来ている。 「世界共通炭素税」の徴収は、制度を単純にするためと公平性を保つために、すべて採掘段階で課税する。 その税率は、風力・太陽光・バイオマスなどの再生可能な自然エネルギーなどの新しいエネルギーへの転換が早急かつスムーズに 進むぐらいの高率にすべきである。 税率は、おおよそ100,000円/トン(炭素)にする。ガソリン1リットル当たり約70円の換算である。 (環境庁が考えているような、2000円/トン(炭素)程度では直接的な削減効果は十分に期待できない。また、それを福祉など 関係ないところに使うなんて何をとぼけたことを考えているのですか?) 上の税率を世界の二酸化炭素排出に課税すると、初期年度での税収は年間約300兆円規模となる。なぜなら、 二酸化炭素の世界全体の排出量は、現状で 約307億トン(2008.4時点)であるから、炭素に換算すると、 307億[トン(CO2)/年]/3.66[トン(CO2)/トン(炭素)] = 83.88億[トン(炭素)/年] である。したがって、税収は、 100000[円/トン(炭素)]*83.88億[トン(炭素)/年] = 838.8兆[円/年] となる。 もちろん、これだけ課税すれば毎年排出量は減るので税収も減っていく。たとえば、10年間で8割減ったと仮定して (少なくともこれぐらい達成しなければならない)、その間の税収総額は、 (838.8兆[円/年]+838.8億[円/年]*0.2) /2*10[年] = 5032.8兆円 となる。 この約5,000兆円を、先に上げた脱炭素社会の開発と整備に直接投資する。詳しい使い道は次項に記す。 |
工業国における産業部門からの排出を除くと、温暖化ガス排出の大半が発電と車である。(注・米国の産業部門からの排出は全体のわずか
20%弱である。日本は35%を越えていて、その3分の1は製鉄である。)
先ずは、発電と車のエネルギーインフラの革命的変革なくして地球温暖化問題の解決はない。 省エネは地球資源を守る上では必要であるが、今の地球温暖化問題の解決には間に合わない。化石燃料に頼らないエネルギーインフラに、 早急に切り替えなければならない。 中長期的には、核融合発電などの新技術が待たれる。これらは新技術開発への奨励金によって人類の叡智を結集して実現を早める。 それまで、短期的には既存技術で可能なCO2を出さない再生可能エネルギー(風力発電・太陽光発電・地熱発電など)や 原子力の活用でつなげなければならない。 更に応急処置的には、石炭やガスを使う発電所から出てくるCO2を分離し地下に貯蔵する技術( CCS )を使うことなども考えなければならない。 車の脱炭素化は、発電が脱炭素化になれば充電スタンドや水素スタンドのインフラを整備し、 電気自動車・水素自動車などを普及させることによって、脱炭素化は比較的容易であろう。
次に、産業部門の二酸化炭素ガス排出を抑制するには、高い炭素税が課せられれば技術力のある先進国(日本など)では、
脱炭素化の技術開発が加速し自ずと脱炭素化は進むと期待できる。更にその技術を世界共通の炭素税収で買取り、開発途上の工業国に
無償で支給し協力援助すれば世界の産業部門から排出される二酸化炭素ガスの削減が進む。
このように世界中をこれらの技術革新とインフラの切り替えには途轍もない研究投資とインフラ投資が要るが、 これらは世界共通で徴収した炭素税でまかなえば良い。 現実問題として世界全体でみると、今のままでは今後、大きい人口を抱える新興国での経済発展が進めば二酸化炭素ガスの排出を 大きく増やすことは目に見えている。 中国・インドやアフリカの経済成長は 世界全体にとっても重要である。これらの国の成長を助けながら世界全体で脱炭素化してゆくことが肝要である。 具体的には、技術のある(先進)国でまず脱炭素社会を実現し、それを発展途上国にも広めてゆく。 その際の技術などの買取り費用を炭素税収で賄い、途上国には無償で提供すれば、双方にとって不満はないはずであるし、 今まで大量に排出してきた先進国にはこういった施策の推進に対する責務がある筈である。 |